コラム

レストレスレッグス症候群の初めての患者さん/印象に残る患者さん
その11: 20年前はアカシジアだと思っていました
新野 秀人 香川大学医学部 精神神経医学講座
20年前はアカシジアだと思っていました
最初のレストレスレッグス症候群の患者さんがどなただったかは思い出せませんが、定期的に精神科の外来を受けもち始めた1989年頃から、脚をじっとしていられなくて眠れないという患者さんがちょこりちょこりとお越しになっていたので、きっとその頃にはレストレスレッグス症候群の方に出会っていたのだろうと思います。

といっても当時はレストレスレッグス症候群という認識はなくて、アカシジアの患者さんを診ているつもりでした。アカシジアは身体や手足がざわざわ、むずむずしてきてじっとしているのが我慢できなくなる症状で、重症になると身体を揺すったり足踏みをしたり歩き回ったり、とにかく動き回っていないと気持ちが落ち着かないのです。

アカシジアは抗精神病薬や抗うつ薬など精神科系の薬が原因で起こることがよくあり、アカシジアが夜間に起こって眠れないという患者さんも少なくありません。ただ、アカシジアはベンゾジアゼピン系薬物のクロナゼパムが著効する例が多く、臨床的にはそれほど難しい対応を迫られることはありませんでした。

しかし一部の患者さんでは、クロナゼパムを飲んだ直後は眠れるようになっても長くは寛解が続かず、数カ月するとまた眠れないと訴える方がいました。夜に中途覚醒すると脚がじりじりしていて、もう一度寝つくのが難しいという患者さんもいました。今振り返ると、このような患者さんがきっとレストレスレッグス症候群だったのだと思うのです。しかし、何しろ病気についてほとんど知られていない20年前のことで、レストレスレッグス症候群に関する論文も学会報告もほとんど見当たりませんでした。現在なら、もっと適切な治療ができたのにと残念に感じます。

その後少しずつレストレスレッグス症候群の認知が高まってきて、ドパミンが関係する病気らしいということや、レボドパやドパミンアゴニストが有効だという情報がちらほら聞かれるようになりました。今やプラミペキソールが治療薬として保険適応を取得し、効果の高い薬ということがはっきり分かっています。

脚の症状を忘れて親戚の話を語るおじいさん

最近診察した80歳代のおじいさんもプラミペキソールが著効した患者さんの一人です。初診時、ご家族が同席されたのですが「うちのおじいちゃんは、夜になると毎日毎日脚のことばっかり気にして眠れないんです」というお話で、私自身もおじいさんから、脚がむずむずして寝られないという体験談を繰り返し繰り返しお聞きすることになりました。

ところがレストレスレッグス症候群の診断がついてプラミペキソールを処方した途端に脚の症状はぴたりと消え、おじいさんから辛かった体験談を聞くことも一切なくなりました。その代わり今度は、受診のたびに「先生、実は先生によぉく似た親戚がいて、今やってる仕事は…」と延々と身内のお話をするようになったのです。

話の合間を見計らって、「脚の調子はどうですか」と質問しても「脚? 脚はもう何ともないですよ。それよりも実は先生によく似た甥がいて…」というような具合で診察時間が過ぎていくことが多くなってきました。ですので、レストレスレッグス症候群の治療をしているのとは少し違う気もするのですが、症状がすっかり改善して定期通院にも生き生きと通ってきていただいているので、このおじいさんのお役に立てているのは確かなのかなと今は思っています。
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レストレスレッグス症候群とは
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